現世と異世界六花【元スロ外伝】

結城らぴ

09 変わった事

「バレたらって、何かやましいことでもあるの?」

 私はヌーイくんと会話を続ける。

「ふぅん。あ、猫ちゃんいる」
「焼き鳥おいしー」

 甘堕は『ふぅん』と、ちょっと話を聞いていると見せかけて、あまり興味無さそうな感じなので、そこら辺にいた可愛い野良猫を観察している。らぴちゃんさんは焼き鳥2本目……いやこれは3本目だな。とにかくバクバク食べている。なんてマイペースな人達なんだ。

「……いやー実は、オフ会始まるまでにここで手伝いをしとんねん」
「なるほど……?」

 少し間が空いてからヌーイくんは返事をした。どうやら手伝いをしているらしい。

「そんな事より、何か変わった事無かった?」
「変わったこと……?」

 なにやら深い意味がありそうな言葉で空気が静まり返る。私にとってはこの変な世界に居る事がそもそも変わった事なので、何から言えば良いか分からない。

「甘堕、なにかあったっけ」

 とりあえず野良猫に夢中な甘堕を頼る。突然よく分からない世界このに来て困惑している私より、この世界で生まれて当たり前のように過ごしている人に聞くのが一番だよね!

「えーっと。まず今朝から六花の様子がおかしいのと、店長の服装がやばいのと、おかしい奴が事故ってた。あと猫ちゃんが可愛い」

 甘堕は野良猫に猫じゃらしを与えながら適当に口を動かした。1つ微笑ましい物が混じっていた気がするけどいいや。

 確かに、異世界から来たとはいえ普通に見れば頭おかしい私、コート似合ってるけど変なサングラスを身に付けていてついでに変なバックを持っていた店長。そして赤信号なのに笑顔で横断歩道通ってそのまま大惨事になった人。なんか狂人が多いな。

「そうか。六花さんの様子がおかしいのと、店長……はええか。んでおかしい奴が事故っとった……っと」

 ヌーイくんはスマホを片手に何か操作しながらブツブツ呟いた。怪しい。

「それ何見てるの?」
「えっ。ああ、なんでもないで」

 いや絶対それ何かある時の言い訳じゃん。

「ちなみにその事故っとった人って、どんな人なん?」
「なんか『僕の声真似聞いてもらっていいですか』とか色々おかしな事を言ってた」
「ああ……あいつか」

 え、なんでそんな意味深な事言うの。お姉さん気になっちゃうんだけど。

「あ、やべ」

 突然ヌーイくんが焦ってそう言った瞬間、焼き鳥の屋台は燃え上がり、あっという間に真っ赤な炎に包まれた。

「ミスって屋台の屋根に火が引火したわ」

 ヌーイくんは炎に包まれた屋台の中でそう言う。いやなんでやねん! 思わず下手な関西弁出たわ!

 そんなツッコミをしているうちに、どんどん炎の中へとヌーイくんの姿が見えなくなっていく。

 ――これ結構やばくない?