現世と異世界六花【元スロ外伝】

結城らぴ

05謎のバック

 その黒髪青メッシュというのは、あのウィングせんせの事だ。腹が立つくらいコートが似合っている。てかよく見たら変な眼鏡がサングラスかよく分からないものを身に着けている。他にも手に大きなバックを持っている。まるで海外スターだ。

「六花、こんなところで何してんの?」

 ウィングせんせは、サングラスっぽいのを華麗に外す。案の定『何してるんだこいつ』の目だ。これは異世界でも恐らく変わらない。歩道のど真ん中で大ショック受けた人ポーズしている人がいたら、そりゃ不審に思うよね。

「あ、ウィングせんせか。いやまあちょっとね」

 ウィングせんせにも魂がどうとかの話はしない方が良いと思い、一応適当な言葉で誤魔化しておいた。魂について話したら、絶対なにか色々言われるに決まっている!

 ところで、ウィングせんせが手元に持っている謎の大きいバック。トートバックというやつだろうか。それが結構目立っていて、何が入っているか気になり、まじまじと見てしまった。

「……!」

 トートバックへ向けられる視線に気付いたウィングせんせは、しれっとトートバックを隠すように自分の後ろに手を回した。

 その時、背後の方からさっきまでよく聞いていた声が聞こえた。

「ねぇー六花さっき突然どうし…………って店長?」

 バスから私を追ってきたであろう甘堕が後ろから小走りをしながら私とウィングせんせに話しかけてきた。ごめん、魂に夢中で甘堕の存在を忘れてた。

「店長、今日のオフ会は急遽用事で来られないって言ってたよね?なんでここにいるの?」

 そう言えば、私は甘堕とバスでどこに向かってるのか理解していなかった。どうやらオフ会というものに行くらしい。ここで情報ゲット!

「いやまあ、まあ、うん、あのね?」

「いやそんな適当な誤魔化ししなくていいからさ。そのサングラス何よ?」

「ああ、えっと、どうしよ。これはあれだ、日差しが強いからなんていうか」

「ふーん?」

 甘堕と店長が私を置いて色々喋っている。でも店長、何か様子がおかしい。隠し事をしているような。甘堕もそれが勘付いているらしく、ウィングせんせが手を後ろにして持っている大きいトートバックに目をつけた。

「てかその袋なに?」

「あー、あー!聞こえない!じゃ、じゃあね!」

「待ってって!」

 甘堕は逃げようとしている店長のコートをガシッと掴んだ。結構真剣そうな感じだ。

 そんな時、私は辺りをキョロキョロして街並みを楽しんでいたのだった!道の端っこに『焼き鳥』……と書かれた屋台を発見した。なんか美味しそうな匂いがする。

「あれおいしそー!」

「こら、今は屋台で飯食ってる時間じゃないぞ」

「別に食べたいなんて言ってないもん!悲しい!」

 でも食べたいと思ったのは本当である。口に出してないだけ!

 甘堕は、焼き鳥に目を惹かれている私とウィングせんせの袖を両手で掴んで、本来の予定であったと思う焼き鳥の屋台とは反対の方へ歩き始めた。

「じゃあドタキャンした件、ちょっと歩きながら話を聞こうか?」

 甘堕の顔は笑っていなかったと思う。