現世と異世界六花【元スロ外伝】

結城らぴ

04 完璧な理由

 魂らしき物はバスが進むのと一緒に、並行にふわふわと進んでいる。でもいつ気まぐれで変な方向へ飛んでいって見失ってしまうか分からない。早めに捕まえるのが良さそうなのは確かだと思う。

「にしても、どうしよう……」

 はっ……まてよ、私身長低いからこの窓から外に出られるくない?やばいこれだ。天才かもしれない。よし早速実行。

「よいしょっと……」

 少し開いていた窓を全開にさせて、足を上げいつでも窓の外へ出られる状況になった。風をめっちゃ感じる。それと同時に甘堕が焦ったような声で私に話しかけてきた。

「ちょ、ちょ、ちょ!?六花なにしてんの!?」

「え、あー、えっと……」

 魂見つけたから早く捕まえに行かないといけない、なんて言ったらもっと頭おかしい人判定になるよな……。この世界に適応できる理由を考えないと……あ、そうだ!

「ちょっとお手洗いに行きたくて!」

 よし、完璧だ!お手洗いならこの世界にもあるだろうし、バスから突然降りる完璧な理由になる!

「いやそんなにトイレ行きたいの!?おかしいでしょ!危ないって!次のバス停で止まったら降りていいから、今すぐちゃんと座れ!」

 どうやらおかしい発言だったらしい。うーん、この世界って難しいな。

「はーい」

 私は元の席へ座った。もちろん魂は見逃したくないから目で追っているけど。

 次のバス停という場所でバスが止まったら降りても良いらしいから、その時まで大人しく待つか……。もし私がこの世界の人達にとっての変な行動をして、大変な事になったらやばいからね。

『次は~〇〇、〇〇です』

 バスのアナウンスが車内に響くと同時に、甘堕が停車ボタンをポチッと押した。なるほど、そういう仕組みなのね。めっちゃ良いシステムで関心しているうちに、バスはその場にゆっくりと停車した。

 さて今から降りろうと思っている時。目で追いかけていた魂はまだ普通に進んでいて、そこら辺の角を曲がろうとしていた。やばい、ここで見逃したらもう魂を見つける事はできないかもしれない。こうなったら今すぐにでも追いかけなくちゃ!

 私はそのままバスの窓から地上へ華麗に飛び降り、ちょっと転びそうになりつつも全力疾走で歩道を走り出した!後ろから甘堕の「ちょっと六花なにしてんの――」みたいな声が聞こえた気がするけど、まあ気のせいでしょ。

 全力疾走で追いかけ……追い……かけ……ゼェ……ハァ……あれやばい息切れした。まずい、まずい、まずい、魂見失っちゃう!

 最後の力を振り絞って角を曲がったけど、そこにはもう魂は居ませんでした。あ、終わった。

 もう二度と見つけられないかもしれない魂を見失ってしまったショックで、私はその場で崩れ落ち、肘で四つん這いになり下を向いた。そこで息を整える。大ショック受けてしまった人の図みたいになってしまった。

「ま……まじか……」

 そのままこれからどうしようかと悩んでいると、目の前から足音が近付いてきて、視界の端に靴が見えた。もしかして……。

「こ、KOHA9さ……!」

 KOHA9さんだと謎の期待して顔を上げると、そこにはコートを着た、黒髪青メッシュのよく見慣れた顔が立っていて、私を見ていた。