現世と異世界六花【元スロ外伝】
結城らぴ
03 窓の外
助けに来るはずもないKOHA9さんの事を考えて涙目になっていると、私の背後からゆっくりと近付いてくる足音が聞こえてきた。
「!もしかしてKOHA9さ……」
振り向くと、そこにはペットボトルの飲料を飲みながらこちらへ向かって歩いている甘堕が居た。KOHA9さんがこの世界に居る訳がないと知っていたはずなのに、心のどこかで居ると期待していた自分が馬鹿馬鹿しくなった。
「なんだか、甘堕か……」
「なんだって何よ。じゃあ六花、行こっか」
「行くってどこに?」
数分前、この世界の甘堕と初めて会った時、ばす?に乗るとかなんとかって言ってた事を思い出した。
「あ、もうバス来てるじゃん!早くしないと!」
そう言って突然、甘堕は私の手を引いて大きな機械の前へ向かった。この機械とよく似たような物がそこら辺の道を物凄いスピードで走っている。これがもしかしてバスというものなのかな。
「あのさ、さっき乗るって言っていたけど、まさかこの中に!?」
「は、はあ?もちろんそうだけど」
何言ってるんだこいつのような顔をした甘堕は、まるでこれが普通かのような素振りでバスの中へ入っていった。私もそれを真似して甘堕の後を追う。
バスの中には人々が行儀良く座っていて、私と甘堕も同じように空いてる席に座る。それと同時にバス全体が動き始めた。KOHA9さんと飛んでいた時とはまた違う感覚で、風圧を感じない。でもバスは目的地へと着実に進んでいるようだった。
○
バスに乗って数分が経つ。異世界からやってきた私がバスに乗るのはもちろん初めて。それが私にとって不愉快というか、強い違和感があった。
「なんか六花、顔色悪くない?」
私の違和感に気付いたのは隣の席に座っている甘堕。正確には、この世界の甘堕だけど。
「朝から様子が変だし、本当に大丈夫?」
「ちょっと気が動転してるだけだから大丈夫だよ」
「そっか」
そんな会話をしながら、バスの窓の外を眺めている時。1つ目に留まった物があった。
フワフワと浮いている白くて丸くて半透明な何か。かわいいなーと思いながら目で追ってみる。フワフワと浮いている白い物で思い出したけど、そういえば私、魔王せかいに魂を捕まえろみたいな事言われてたな。
……あれ?これ、もしかして魂!?
間違いない、これどっからどう見ても魂だよ!
「ね、ねぇ、甘堕あれ見てよ!」
「急に焦ってどうしたの六花」
「あ、あああの!フワフワと浮いている白くて丸くて半透明の!」
「は?なにそれ。そんなのいるわけないじゃん」
「ほら、あれだよあれ!」
「六花、前から怪しいと思ってたけど、本格的に頭おかしくなった?」
「冗談とかじゃなくてさ!」
魂らしき物は明らかにこちらから視認できる位置にいるけど、甘堕は見えていないみたい。もしかして異世界の魂が入っている私にしか見えなかったりする?嘘でしょ。