現世と異世界六花【元スロ外伝】
結城らぴ
02 理不尽な要件
甘堕が自販機という場所へ向かってすぐのこと。
光り輝く結晶が目の前に下りてきてびっくりした。魔法とかそういう類の物だと思う。
結晶はフワフワと浮いていて、私の目の前で停止した。
「な、なにこれ」
人差し指でツンツンとその結晶を触ってみると、結晶の中から声が聞こえてきた。
「あー、あー、マイクテストマイクテスト……聞こえてますか?」
「!?だっ、誰?」
「せかいだよ!ほら魔王の」
「あのせかい!?」
せかいというのはKOHA9さんと戦った魔王のこと。そんな魔王がなんでここに、私に話しかけて来ているのだろう。
「いやー実はね、六花さんは死んでしまったんだよ」
やっぱり私はあの時、死んでしまった事で合っているみたい。
「ということは、ここは死後の世界なの?」
「それは違うよ。ここは別の世界なんだ」
「ほう……?」
別の世界?違う世界線ってこと?確かに、ここはあの国とは全く違う街並みをしている。
「KOHA9さんの為に六花さんを復活させようと思っているんだ。そこで六花さんの魂を探していたんだ!」
「そうだったんですか!じゃあ私はKOHA9さんの所に帰れるの?」
「あー……それなんだけど……」
せかいは言いづらそうな感じに言葉をためる。
「実は、六花さんの魂を入れる場所をミスったんだよね」
「なにやってるんですか!?!?」
「元々この世界で暮らしていた一般人六花さんと、魔法使いの六花さんがとても似ていて、魂が入れ替わりになっちゃって……まさか、別の世界にも六花さんとよく似ている人物が居るとは思わなくてさ!ごめんね?」
「いやいやいや、ごめんねで済むような話じゃ……ということは、元々この世界で暮らしていた一般人六花の魂は今どこに?」
「そう、その話を今からしようと思っていたところなんだ。わざわざこうやって高度な技術を使って、わざわざ異世界に干渉しているくらいだからね」
「あ、はい」
「六花さんへの要件は1つ。なんとか頑張ってその魂を捕まえて欲しいんだよ」
「ええ……ええぇぇ!?」
「本当はこのまま六花さんを元の世界に戻して蘇生しても良いんだけど、そうしたら一般人六花さんの魂が抜け殻になって、まあ大変なことになるからさ」
「言いたい事は分かるけど、それはあまりにも理不尽じゃない!?」
長々と話していると、結晶の光が点滅しながら段々と薄れてきた。
「おっと、もう時間が無いみたいだな。そんなこんなで、元々この世界で暮らしていたように振る舞って、頑張って魂を捕まえてね!そんじゃ」
「え!?ちょっと待って」
私の言葉には目もくれず、そのまま光と共に結晶は跡形も無く消えてしまった。
これからどうしよう、KOHA9さん助けて……。