world behind coffee shop
六花
3話 影の底に
「おい、そこにいるのは誰だ。」
「こんばんは、はじめまして。"胡椒"は売ってますか?」
不審な男が笑ってそう言った。
「………」
なんで、それを知っているんだ?依頼者の誰かが言ったのか?この男も裏側の人間?
「まぁまぁそう怖い顔しないでくださいよ。ウィングさん、僕と取引しませんか?」
「取引?いや、まずなんで僕の名前を知ってるんだ?」
「あぁ、そういえば自己紹介してませんでしたね。僕はKOHA9、情報屋です。皆さんのことは大体知ってますよ。僕も皆さんと"同じ"です。」
と言ってこの男の影から何かが伸びた。
「僕は影を操れるんです。そちらの方と同じで」
六花が水を操れることも知っているようだ。
六花は店に入ってからKOHA9さんをずっと見ている。何してんだこいつ。
「で、取引ってなんなんだ?」
「そうでした。本題なんですが…僕をここ専属の情報屋として雇いませんか?」
「情報屋?」
「別に裏だけじゃなくて喫茶店で働きつつでもいいです。給料もいらないです。僕を雇ってください、お願いします。」
給料なしで働く!?でも人手は足りてるんだけどなぁ…なんでそんなにここに執着するんだ…
「うーん、そんなに言うならいいけど…」
「ちなみに、こはくん…君から微妙にやってる霊気感じるけど私達みたいなのと契約してるの?」
そう人魚が言った。
「してません。能力持ちなんですけど…なぜか霊気が出てるんですよね。」
「それなら霊寄ってきちゃって大変なんじゃないの??」
「まぁそうですね。一応簡単な除霊はできますけど…」
「じゃあ、バーに封印してあるあいつと契約する?そしたら霊寄らなくなるだろうし、寄ってきてもあいつなら大丈夫でしょ。」
そう僕は提案した。
「契約…ですか…」
「?…大丈夫そう?」
「あぁ、はい。大丈夫です。やりましょう。」
そう言って、僕たちはバーに降りていった。
バーのワイナリーにあるレバーを下ろすと、"あいつ"を封印している扉が出てくる。
『おぉウィング。随分背が伸びたのう。何年経ったんじゃ?』
「ざっと4年とかじゃないかな。」
『短いのう。』
「お前からしたらな。それより、お前今日からこの人の護衛を頼む。」
『なんじゃ。拒否権無しか。うーん?どっかで見たときある顔じゃのう。』
「?…この人はKOHA9さんだ。明日からここで情報屋をやってもらう。」
『………なるほどKOHA9というのか。今日から宜しゅう頼むぞ。』
なんか間が気になるな。
「はい。よろしくお願いします。あの?、ところであなたのお名前は…」
『儂は月夜見尊じゃ。』
「ツクヨミ…って神じゃないですか!なんでここに…」
「まぁ色々あってね…詳しくはそのうち教えるよ。」
「そうだ。情報屋って言ってたけど、喫茶店で働くって言ってたよねぇ…。」
僕はニヤニヤして言ってみた。
「でも、人手は足りてる。ので!バーの方で情報収集を頼みたい。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「それで、早速調べてほしいことがあるんだけど…」
そんなことを話していると、月夜見尊の雰囲気が変わった。
『…いやぁ久々に外の空気を吸った。…じゃが…汚いのう。汚い。汚れておる。どいつもこいつも好き勝手しよって。こんなんじゃあ、人っ子の1人や2人消えてもわかりやしないかもしれんのう?』
と言って僕とKOHA9さんを掴んで宙に浮いた。
「…え、」
「店長!!!!!」「KOHA9さん!!!」