world behind coffee shop
六花
2話 水の中に
あと30分程したらこの店の閉店の時間だ。
この時間帯になると店にいるのはバイトのらぴちゃんと常連客ぐらいになる。だが今日は常連客が1人足りないようだ。
閉店時間までみんなで話してようと思い、僕もコーヒーをもってみんなのいるテーブルに向かったとき、喫茶店の扉が乱暴に開いた。
「いらっしゃいませ。おや、甘堕。遅かったな。」
「スパイスだ」
挨拶を返す間もなく甘堕が言った。
すると、店内の空気が変わった。
「一旦裏行くよ。みんな。」
少し早いが、僕は店の看板を「closed」に変え、地下へ向かった。
「何があったんだ?」
そう問うと、甘堕は
「3日前、隣町で子供が4人行方不明になった事件あるだろ。子供たちの最後目撃されたのがその町にある大きめの池だったんだが、気になって今日その池に行ったんだ。そしたら瘴気がすごい。多分その子供たち"喰われた"な。」
「放置したらあれもっと喰いだすぞ。」
「…なるほど……池…水ねぇ、得意じゃないんだよねぇ、あ、いい所に人魚の鱗持ってる人いるねぇ」
僕はそう言って、バーのカウンターで駄菓子を食べている六花を見た。
六花は嫌そうな顔をしている。
「………えめんどくさなんだこいつ」
早口で六花が言った。小声で言ったみたいだが、聞こえてるぞ。
「まぁいいよ。その代わり、ウィングせんせ、ついてきてね。」
「わかったよ。」
そして僕と六花と甘堕は池へ向かった。
「さっき来たときより瘴気強くなってるぞ!やばいな。六花、早く、」
「はぁ~、いっちょやりますか~!」
と言って六花は人魚の鱗を取り出し、鱗で指を切って池に投げ入れた。
「姐さ~ん、何居る~?」
「これは水女だね。水女って普通は人を襲ったりしないんだけど…」
そう人魚が池から顔を出して言ったとき、池の水面が揺れ始めた。
「水女が出てくるよ!」
「姐さん、どうにか水女落ち着かせられないかな?!」
「花ちゃんはいっつもお人好しだねぇ…まぁ頑張ってみるよ。」
「頑張れ~!」
そうやり取りして人魚は水の中に潜って行ってしまった。
数分後、また水面が揺れたと思ったら静まった。水中で何が起きているんだ…
そして、人魚ともう一人、女性が池から出てきた。
「お疲れ、姐さん、そちら水女さん?」
「そうだよ。いやぁだいぶ霊素消費しちゃったかも?…強いねぇ水ちゃん!」
そう呑気に人魚は言う。
「ありがとうございます…そんなことより、皆様ご迷惑かけて申し訳ないですっ!あの、お怪我無いですか…!?あぁもうほんと私何してたんだろう、えっと、本当にごめんなさい!…さっきまでの記憶がなくて…私何したんですかねこんな暴れちゃって………」
早口で水女は言った。
「…いや、僕は怪我はないが…ちなみに記憶がないってのはどういうこと?」
「その…私たち中級以上の霊って基本的に自我あるのはご存知ですかね、えっと、あの、私も自我も記憶もあったはずなんですけど、え?、ここ一週間?ぐらいかな?記憶がなくて…」
「なるほど」
「とりあえず、ここじゃなんだし店戻って話すか。六花お願い」
あいよっ!と六花が言って、人魚と水女のいる部分の水を浮かせた。
暗いし、人通りも少ないから、まぁ…大丈夫か。
無事に店に戻ってきたわけだが、なぜか鍵が開いていた。みんな出てくとき閉めたはずだけどなぁ。
そう思って入ると中に人が立っていた。