world behind coffee shop

六花

1話 裏の世界に

この店は僕が経営している喫茶店。
いつも通り3人の常連客と、数人の客が来ている。
そこまで人が多くはないが少ないわけでもない。
表向きでは普通の店を経営している。
「店長、コーヒー1杯、砂糖多めミルク少なめ胡椒入りで」
そうお客さんが言った。
「すいません胡椒は切れてるんですよ?」
「そこをなんとか…!」
そんな会話を僕はしていた。すると副店長である自戒さんが
「店は任せてください。やっておきます。」
そういったので、あとは自戒さんに任せて、お客さんを店の裏まで案内した。
そしてランプの下のレンガを踏むと地下通路が出てくる。
「こっちだ。ついて来い。」
「あいよ。」
降りると喫茶店とは別にバーがある。
「依頼内容、報酬を言え。」
「えっとなぁ、最近俺の店で不審な事件があるんだよ。俺たちは歌舞伎町でホストやってるんだが、」
「どういう事件だ?」
「あぁ、なんだってうちの店から出た人が突然暴れ出したり、最悪の場合は死んだりするんだ。」
酒を飲んで暴れただけじゃねぇのか?
「まぁとりあえず来てくれ。」
僕は渋々ついて行った。
そう、僕の喫茶店は、表向きではただの喫茶店だが、僕・副店長・バイト・常連客の3人の合計6人で裏で便利屋をやっているのだ。
「ここだ。」
「ここがお前らの店か。」
微量だが瘴気を感じる。これは"いる"かもしれない。
「…なるほど、これじゃあそんな事件も起こるわな。」
「何かあるっていうのか?」
「いやぁ…入ってみないことには分からないな。」
そして中に入ると、そこには大量の酒と灰皿。下町にありそうな景色だな。
ん?この奥から大量の瘴気を感じる。かなりの大きさだな。
「おい、ここって入ってもいいか」
「あ?従業員室か。ここに何かあるのか。入っていいぞ。」
そこには開店前だからか、数名のホストが喋っている。
そのうちの煙草を吸っている金髪黒マスクのやつか…危険だ
「おい、そこの金髪黒マスク。臭ぇよ。」
「あ゛?うるせぇな。喧嘩売ってんのか?」
そう言うと依頼主が小声で
「やめといたほうが良いですよ、店長さん。こいつはうちのホストの中でも危険なやつなんです。」
「いや、さっき言ってた事件の原因はこいつの瘴気だ。悪霊憑きだな。」
「おい、なにごちゃごちゃ言ってんだよ。今更ビビってんじゃねぇぞ!」
そして僕は鈴付きの紅白組紐を取り出した。
「来い、コン。」
そうすると狐のような白い尾と少し長い耳をもった女性がでてきた。
「なるほどご主人。これが今回の"お客さん"ですか。なんとも不味そうなもんで…」
「やれるか。」
「妾を舐めないでくださいな。おあしはいつものでいいねご主人?」
狐女は笑った。
どこからか鈴の音がチリンと鳴った。するとあの金髪黒マスクの男の後ろから出ていた"霊気"が消え去った。
「終わりましたよ。ご主人。」
狐女は静かに微笑み、消えていった。
そして金髪ホストは正気を取り戻した。
「俺は…一体…」
そうして僕たちは店から出ていった。
「さて、報酬をもらおうか。」
「この事件はいくらが相場だ?」
「ざっと30万ってところだな。」
「あぁ了解だ。受け取ってくれ。」
「今後ともご贔屓に?」

そして僕は地下道路を通り店に戻った。
「おかえりなさい店長。どうだった?」
「いや?、今回は中級の悪霊憑きでさ。コン召喚しちゃった。」
「コンですか。それは代償も大きいんじゃないですか?」
「まぁちょっと血抜かれただけだから大丈夫。」
そう、これは裏の仕事。表舞台には出ることのない僕たちだけの仕事なのだから。